法人紹介

第2章 友達との育ちあい

2-2 「遊び」と「育ち」

私共の保育園から、今年度も32名の子どもたちがそれぞれの小学校へと巣立っていきます。「周りの人に優しく、自分の心を強く持てる皆さんは、小学生になってもきっと大丈夫。心配もなく楽しい小学生になれるね」といつも話しています。決して「そんなことでは小学生になれないよ」といったたぐいの言葉掛けはしないように職員にも保護者の方にもお願いをしてきました。

未来ある子どもたちがこれからどう生きてゆくのか、限りなく豊かで新鮮な心をどのように膨らませてゆくのか、一人一人を見つめていると、これから老いてゆく私などは「この子たちに未来を託すのだなぁ」と頼もしく感じることがあります。

お昼寝をしなくなった年長組の子どもたちは、事務室にいる私とお昼を一緒に頂いています。毎日二人一組で事務室のドアを開け、「おじゃましまーす」と恥じらいと得意気の入り混じった表情で訪れてくれます。テーブルを丁寧にふき、緊張の面持ちで3人分のお茶を注ぎ「いただきます」のごあいさつをします。楽しいおしゃべりをしながら保育室とは違った食事風景が展開されます。子どもたちの会話に出てくる、お父さんにもらったうれしかったこと、お母さんに聞いたお話などは尽きることがありません。

「先生聞いて!僕、昔、赤ちゃんだったころね、お父さんに自転車の後ろを持って押してもらったよ」「お父さんとお母さんといとこの○○ちゃんとレストランに行ったよ」「先生は大きくなったら何になりたい?」「僕の好きな女の子はね、先生に教えてあげる」といろんなおしゃべりをしてくれます。スタンプペンを使い、自由な絵を描いていく二人のおしゃべりも楽しくて思わず吹き出してしまうことがたびたびあります。大人では思いも寄らない発想や想像力に驚き、感動し、しみじみと子供の“育ち“は素晴らしいと感じるひとときです。一枚の絵をお父さんお母さんへのお土産にし、「おじゃましましたー」と事務室から保育室へ戻る二人の表情はきらきらとまぶしく、「またおいで」と見送る私は、貴いプレゼントで胸がいっぱいになってしまいます。

身近な大人や友達とのかかわり(遊び)は、学校に入る前に子どもの心に育てておいてあげなくてはならないと思います。園庭で十分に駆け回り、笑い転げ、生き生きとした時間を発想できてこそ、大きくなった時に自分の身に付いた機能が存分に発揮されるのではないでしょうか。

子どもは、友達との遊びの中で、規則を守ること、役割を分担して責任を果たすこと、感動を分かち合うことなど、無理なく自分の手で習得できるのです。小学生になるまでの限られた時間でさらに成長してくれることを信じ、みんなで見守ってまいります。