皆さんは、ご自分のお子さんにどのような子に育ってほしいと考えていますか。
私共の保育園の保育目標の一つにも『優しい心の子』が掲げられています。お子さんの
入園時に書いていただく生活調査表にも、‘‘どんなお子さんになってほしいですか?‘‘の欄があり、お父さん、お母さんの多くは「思いやりのある子、伸び伸びした子」と書いておられます。
ほとんどの親や大人が、思いやりのある子に育ってほしい、親切な子になってほしいと願うのは当然の事でしょう。
では、「思いやりのある子」「優しい心の子」は、誰がどのようにして子どもに教えるのでしょうか。身長が伸びたり、体重が増えたり、足のサイズが大きくなったり・・・のように、
放っておいても自然に育つものではないと思います。誰かが誰かを思いやる姿を日ごろからたくさん見ていなければ、子どもの心の中に“思いやりの心“は育ちません。
平成17年の秋の親子遠足でディズニーランドに行った時のことです。ハロウィーンも近く、
みんなが思い切り楽しみ、帰りのバスでは疲れてしまって眠っている方たちもかなりいました。私もうとうとしていた時です。
パーキングで休憩になり、私の近くに座っていたご家族(両親と子供3人)のうち、お母さんはよく眠っていました。お父さんがバスから降りて、売店で紙皿に載った焼きたてのイカを
両手に持って戻り、お母さんを揺すって差し出しました。
(優しい良いお父さんだこと)とほほ笑ましく、そしてちょっぴりうらやましく見ていたら、
目を覚ましたお母さんが「あっ!うれしい、ちょうどこれが食べたかったのよ!」と自然に喜びを表し、私はまた(すてきなご夫婦だな)と感心してしまいました。このご夫婦何げないやりとりが周りの人たちの疲れを癒してくれました。普段の生活の中でも、きっとこのような会話が交わされているのでしょうね。
親切な子、思いやりのある子に育ってほしいなら、子どもを取り囲む人が親切な人、思いやりのある人でなければいけません。当たり前のことですが、自分の子どもの心の中に親切や思いやりを育てるのは、大人や両親自身であるということです。このことを忘れて、わが子には親切な思いやりの心が育ってほしいと思っている方が多いのです。親である自分ではなく、
誰かが育ててくれるだろうと希望を持っています。勉強・スポーツ・おけいこ事の知識や技術は、お金を出せば教えてくれる所はいくらでもあります。でも、親切心や思いやりの心というような人間らしい感情は、どんなにお金を掛けても育ててはもらえません。
お金では手に入れられない人間らしい感情が子どもの心に育てられにくくなってきているように思います。これは、自分の家庭でやらなければならないことではないでしょうか。子どもは身近にいる人をお手本にして育ってゆくのです。