私の手元に、私の誕生からをつづった母の日記があります。わら紙を束ねて糸でとじたノートで、
黄ばんでいますが、母の思いがぎっしり詰まった大切なものです。
熾烈(しれつ)を極めた戦争中も、私の身辺や社会情勢が書かれていますが、昭和20年3月、父に応召の電報が
来てから8月15日までは空白です。8月26日、父が帰った日には「朝緒は久々のお父ちゃんで
大喜び・・・終戦しても帰らぬ父を持つ子も多い。父の帰りだけを喜んではいけません。」
九歳の誕生日には「お祝いにスカートを買った。随分私にやかましく言われているけど、きっと
今に役立つはず。これからは朝緒たちの時代、どうか聡明なよい子になってほしい。」
戦争の最中でも、幸せを見いだし、優しく強く、愛情深く育ててくれました。
一つだけお許しが出るなら、母に会いたいです。